〜かおりを飾る〜珠玉の香合・香炉展@静華堂文庫美術館

静華堂文庫美術館で開催中の香合と香炉の展覧会に出かけてきました。

拝見に先立ち、Takさんがナビゲーターを務められた陶芸研究家の森由美さんと学芸員長谷川祥子さんのトークショーも拝聴する事が出来ました。
このトークショーの中では、茶道を中心とする日本の文化の中で、香合と香炉、特に香合がどのように人々に愛でられて来たのかと言うことの概略のお話があり、香合はとても日本的なものだなと思いました。

茶道の普及当初では唐物の道具が珍重されていて、利休登場の後に道具の見立てが普及し、江戸になるとその流れのかから、かわいさのある香合に関心が高まって言ったそうです。
色があるものが少なめなお茶の席で、色や形の自由さで遊べる当たりも、香合に関心が高かった理由でもあるそうです。

香りの道具についてのお話でしたので、香道についてもお話がありました。
会場にも素晴らしい出来映えの吉野山蒔絵十種香道具が出品されていました。

香道を楽しむには和歌などの文学に通じている必要があるそうです。
以前、香道を体験する機会があり、香木からの香りを聞いたことがありますが、その時は脳の奥底に直接刺さるような感覚を覚えました。爬虫類の脳が反応している感じです。
しかし、今日のお話では、香道を楽しむには文化的な脳の使い方が出来ないと理解出来ないらしいので、この道は脳を垂直的に使う事のできる非常に奥深い道なのかなと思います。
そうした重要な力を持つ香木や練り香を入れる器ですから、ここに展示されているような技術と美術的な感性を凝縮した逸品達が作られ、伝え残されてきたのでしょう。


展覧会では、そのタイトルの通り、香合や香炉が品良く沢山展示されていました。

いずれも、形や色が創意に満ちたユニークなものばかりでした。


静華堂文庫美術館と言えば、直ぐに思い出されるのが曜変天目茶碗です。
香合と香炉ということで茶の湯に関連する展覧会ですので、やはり登場していました。
今回は曜変の素晴らしさをたっぷりと堪能できるようにとの配慮で、少し低めの展示台に展示されていました。

この高さでお茶碗を拝見する機会は滅多にないので、とても良い体験が出来ました。
稲葉天目はその変化の具合が賑やかで、本当にきれいなお茶碗です。

お茶碗の展示を見る度に、「これを持ってみたいな〜」と思うことが常ですが、今回の展覧会ではこの思いにかなりの精度で答えてくれる素晴らしいサービスが用意されていました。

曜変の再現研究で著名な長江惣吉さんが稲葉天目とほぼ同一サイズ・重量で作られたお茶碗を実際に手にすることが出来るコーナーがありました。
実際に手にしてみたところ、密度の高い土と厚い釉薬のせいでしょうか、見た目よりも重さを感じるものでした。
更に強欲なことを言えば、お茶を飲んでみたかったです。
このお茶碗を実際に手にして体感するためだけにでも、この展開にお運び戴く価値はあるのではないかと思います。


今回の展覧会に関連して、いろいろなイベントが開催されるようです。
特に魅力的なのは、7月1日に開催される香を作る体験会ではないでしょうか。
前述したように過去に香道の体験で強烈な記憶があるので、心底参加したいです。

創意と技術とかわいさに溢れた、楽しい展覧会でした。

※ここに掲載した写真は全て美術館様に特別に撮影の許可をいただいたものです。